あ「それ」って「それ」なのね。それは知るわけもないわ…

鳩山前総理が普天間基地「移設」を断念する直接の要因になった「抑止力」というキーワード(;一_一)
それを肯定するもの、あるいは否定するもの、そもそも「抑止力」って何なわけと疑問を投げつけるもの。反応はさまざまあります。
では沖縄にあるという「抑止力」は何なのか…を考える前に、ブログを一件紹介します。
有名なブログの、有名な記事なので既に目にした方がいらっしゃるでしょう。『内田樹の研究室』記事は「『それ』の抑止力」です。
(引用はじめ)
「それ」の抑止力
http://blog.tatsuru.com/2010/05/28_1008.php
「基地の県外移転」の主張が一気にトーンダウンしたのは鳩山首相が沖縄を訪れたあとの5月4日に記者団に対して述べた次の言葉がきっかけである。
「昨年の衆院選当時は、海兵隊が抑止力として沖縄に存在しなければならないとは思っていなかった。学べば学ぶほど(海兵隊の各部隊が)連携し抑止力を維持していることが分かった」
この言葉に対してマスメディアは一斉に罵倒を浴びせた。
いまさら抑止力の意味がわかったなんてバカじゃないか、と。
私はこのコメントを「不思議」だと思った。
アメリカ軍の抑止力や東アジア戦略のだいたいの枠組みについては、官邸にいたって専門家からいくらでもレクチャーが受けられたはずである。
しかし、そのときのレクチャーでは「分からなかった」ことがあった、と首相は言ったのである。
「抑止力の実態」について、首相は沖縄で米軍当局者から直に聞かされたのである。
聞かされて「あ、『抑止力』って、そのことなのね。あ、それは政権取る前は知るはずがないわ・・・」とびっくりしたのである。
だとすれば、そのときの「抑止力」という語が意味するのは、論理的には一つしかない。
ヘリコプターとか揚陸艇とかいうのは抑止力の「本体」ではない。
考えれば当たり前のことである。
日本が想像できるとりあえず唯一の「現実的な」軍事的危機は「北朝鮮からのミサイル攻撃」であるが、それに対してヘリコプター基地なんかあっても何の防ぎにもならない。
「朝鮮半島有事」のときにそんなにヘリコプターが必要なら、何よりもまず韓国内の米軍基地に重点配備すべきであろうが、韓国内の基地は2008年から3分の1に縮小されている。
休戦状態であり、いまだに「宣戦布告」というような言葉を外交官が口走る一触即発の国境線近くの基地を「畳む」ことは可能だが、沖縄の基地は「畳めない」としたら、理由は一つしかない。
韓国内の基地には「置けないもの」が沖縄には「置ける」ということである。
「それ」が抑止力の本体であり、「それ」が沖縄にあるということを日本政府もアメリカ政府も公式には認めることができないものが沖縄にはあるということである。
そのことを野党政治家は知らされていない。
政府の一部と外務省の一部と自衛隊の一部だけがそのことを知っている。
「それ」についての「密約」が存在するということはもう私たちはみんな知っている。
私たちが知らされていないのは「密約」の範囲がどこまで及ぶかということだけである。
だから論理的思考ができる人間なら、沖縄の海兵隊基地に「それ」が常備されている蓋然性は、そうでない場合よりもはるかに高いという推論ができるはずである。
(一部抜粋―引用ここまで)
さすがに良くできた推論だと思います。とはいえ中身については喧々諤々です。有り体に言って「本土」に都合の良い内容になり過ぎています。
現実問題として、沖縄に「それ」を置く軍事的・政治的余地が日米間に存在するのかどうか。どこか話が作り物っぽい(^^ゞ
そもそもここまで書くなら「核兵器」って、はっきり書けばいいのに…(;一_一)
ちょっとそのままでは鵜呑みにできない内容です。問題提起としては面白いですが、こんなことが本当にあるのかなぁ…(*_*)
ですが「それ」に関して面白い新聞記事を見つけました。
正確には対談記事。6月16日付『毎日新聞』文化欄、我部政明琉球大教授とジャーナリスト松尾文夫氏の対談。あるいは「それ」は「核兵器」ではなかったかも…(^_^;)
松尾氏は親米派の現実的な思考を重んじるジャーナリスト。その人がこんなことを言っているのです…。
(引用はじめ)
70年代の米中和解では、当時のニクソン大統領が中国に「日米安保が日本の再軍事大国化を防いでいる」との論理で受け入れさせた。以来、安保と沖縄の基地は東アジアのいわば安定剤になっている。
(引用ここまで)
いわゆる「ビンのフタ」といわれる論理です。
安保の抑止力というと、日米が共同して中国の脅威に立ち向かうという構図を書きがちですが、米中が共同して日本の脅威化を押さえつけているという構図もあるのです。
これも一種の「抑止力」です。そして前述のニクソン大統領の論理も、米国と中国との「密約」ということができるかもしれません。
面白いことに内田教授の「それ」を「米中による日本への抑止」と読み換えても文章が矛盾しません。内田教授の本意とは違うでしょうが、文意は充分通じます。
いわく「聞かされて「あ、『抑止力』って、そのことなのね。あ、それは政権取る前は知るはずがないわ・・・」とびっくりしたのである」うん、そう。あり得ますね。
いわく「「それ」が抑止力の本体であり、「それ」が沖縄にあるということを日本政府もアメリカ政府も公式には認めることができないもの」うん…その通り。
いわく「「それ」についての「密約」が存在するということはもう私たちはみんな知っている」うん。「ビンのフタ」論理、誰でも一回くらいは聞いたことがあるはずです。
案外、鳩山総理が改めて学んだ「抑止力」の正体は「米中による、日本に対する抑止」だったのではないでしょうか。あ、それは政権取る前には知るはずがないわ……(@_@;)
その上で自主防衛を強めて、見返りに沖縄の負担軽減を得るという鳩山総理の構想が実現不可能だったことを松尾氏は示唆しています。
ではどうすればいいのか…(?_?)
我部教授は日米安保の評価と基地問題を切り離して、あくまでも普天間基地は「普天間基地」という単独の問題として扱うことを提案します。
地域特有の問題として「普天間基地」を個別に取り扱う。その上で普天間基地を撤去することが「抑止力」の低下を招くものではないとの論理でアメリカを説得する。
日米安保の再評価は、東アジア諸国との和解と友好という文脈で提示されるべきだという主張です。
現実的かつ建設的な提案です。どうやらまだやれることはたくさんありそう(*^^)v
抑止を敷くよ(ヨクシヲシクヨ)
もう各党は参院選モードですね。
お粗末さまでした(^o^)
スポンサーサイト
<<天下の奇書『こころの案内図』みのもんた著 | ホーム | 一番だけど、40議席!?>>
コメント
コメントの投稿
トラックバック
みかみかりんご♪さんから頂いた難問―金融取引への課税について
みかみかりんごさんから頂いたコメントにレスを付けていたが,長くなったので1本エントリを立てることにした.
前半部を書いているときにはまだ質問の趣旨をよく把握していなかったため,多少的外れなところがあるかもしれない.後半部では,質問の趣旨を「全銀ネット...
参院候補への公開質問やりましょう! 賛同者急募
過労死を恐れて手をつけてこなかった、民主党の参議院予定候補への公開質問。
やっぱり、やることにした。
3年前の参議院選とは、また違...
【国会終了】断固として小沢前幹事長とその同志達を積極的に支持するッ!【参院選】
今年1月18日に招集された第174通常国会であるが、会期最終日を迎えた16日、菅「選挙管理内閣」の一顧だにされなかったママチャリ谷垣率いる売国ジミンは、他の夜盗と語らって 内閣不信任案や問責決議案を乱発 した!
しかし、民主党が圧倒的多数を占める 衆院...
| ホーム |