神話を信じた罪と罰(原発賠償の行方)

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新潮新書から出版された『原発賠償の行方』(井上薫著)は東京電力福島原発事故を法律問題という観点から分析した本ですが、これはなかなかの好著。ぜひ一読を勧めたい。
著者の井上薫は1954(昭和29)年東京都生まれ。東京大学理学部を卒業しています。法学部じゃないんですね(^^♪
司法試験合格後、判事補を経て96年から判事。2006年に判事から弁護士に転身しています。著書に『司法のしゃべりすぎ』『つぶせ!裁判官制度』など。
雪どけ水はいずれの本も読んだことがありませんが、なかなか面白そうです。

本書の帯書には「これは建国以来、最大の法律問題である」と書いてあります。明治維新よりも、敗戦後の新憲法制定よりも、もっと大きな法律問題が日本で発生した…(*_*)
大げさな言葉を一切使わず、淡々と法律のみに問題を絞って論述してきます。

本書で最初に大きなテーマとして提出されるのは「原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)」(昭和37年施行)です。
原賠法の第1条「目的」にはこう書いてあるといいます。何よりも先に押さえておくポイントはココです。
「この法律は、原子炉の運転等により原子力損害が生じた場合における損害賠償に関する基本的制度を定め、もって被害者の保護を定め、及び原子力事業の健全な発達に資することを目的とする」
なんとまあ、恐れ入ったことに現在の法体系では、原発事業の存続が不可能になるような賠償はできないように規定されているのです。これにはびっくり(@_@;)
この法律によれば、原発事業の継続は被害者の保護と同格に重要視すべきこと。そういう枠組みで原発賠償は議論がされるのです。

本書は被害者にとっては厳しい内容も書かれています。東京電力は加害者であると同時に震災の被害者でもあるということ。原子炉メーカーは法律上責任を有さないこと。
今回の震災は「異常に巨大な天災地変」と見なし東電は免責されるべきとの意見も掲載しています。読んでいて腹立たしく思う瞬間があるかも(^_^;)
ただし御用学者の出すトンデモ本とは違い、被害者が越えるべきハードルの高さを認識したうえで泣き寝入りしない方法を考えていくというスタンスです。

本書で指摘された最大のハードルは「過失相殺」です。これは被害者にも落ち度がある場合、被害者の過失の割合に応じて賠償金が減額されていくという考え方。
これは交通事故なんかでもおなじみの考え方。では原発事故における被害者の過失とは何か。それはズバリ「巨額の交付金」です(@_@;)
すでに「巨額の交付金」を貰ってしまった自治体・住民は、原発事故に対して一方的な被害者とは言えなくなってしまうのです。
「アンタ、事故が起こればどうなるか分かった上で原発を受け入れたんでしょう。じゃ、今さら文句言わないでね」という話になってしまう…(@_@;)
「いや、今まで電力会社や国の『安全です』という説明に騙されてきたんだ」という反論がありそうですが、通用しません。
「じゃ、今まで何で巨額の交付金が付いてきたと思っているの?オカシイとは思わなかった?」と言われてオシマイなのです。非情なようですが、それが法律というもの。

しかしこうなると、ネットで良く見る「なぜ汚染地域から避難しないんだ。ひとまず避難して、生活再建の資金を東電に賠償させれば良いじゃないか」という意見はどうなるのか。
いや、雪どけ水もこういう意見を何度か書いていましたが、現実には通用しない模様です。今のままなら「過失相殺」されてしまうのです。
もちろん東電が絶対に賠償しないというわけではなく、著者自身もきめ細やかな対応が必要と指摘しています。ですがそれを加味しても現実は厳しい。
形ばかりの「安全神話」にしがみついたツケがこんなところで回るとは…(@_@;)
その上で著者は、南相馬市が今後の原発交付金の受け取りを拒否表明したことについて、一定の評価を与えています(^_^;)

もう一つ想定される安全神話のツケは海外からの賠償問題(@_@;)
日本の原発は安全という建前(神話?)から、日本は外国との原発賠償交渉で必要な法整備や条約制定を怠ってきました。
安全神話ということのほかに、外国で原発事故が起こったときは、あらかじめそんな法律を作っておかない方が、賠償交渉が有利に運ぶという計算があったようです。
ところがそれが両刃の剣だった。いざ日本で事故が起こると、今度は外国が自国に有利なように賠償額を決めて、勝手な請求をされてしまう恐れが出てきたのです。
日本だって秘かにそれを狙っていたのですから強く文句は言えない。
著者はこの事故で、国内での賠償が総額100兆円以上だという試算を出していますが、海外からの賠償請求がそれをさらに超える可能性を示唆しています。
もしそうなら賠償は天文学的な数字です。第2次大戦でさえ海外からそれだけの賠償を請求されたことはありません。建国以来の問題だという指摘はここでも頷けます(^_^;)

しかし皮肉なものですな。国内の被害者は「安全神話」は存在しないという建前から賠償金を値切られ、海外からは「安全神話」のためが故に多額の請求を突きつけられる。
それはあまりに皮肉なダブルスタンダードです(;一_一)
結局のところ「皇国史観」を本気にした揚句、無謀な海外進出を試み、国を荒廃させた戦前の指導者よりさらにひどい失態を演じてしまったということ。
国の体質というのはそんな簡単に変わるわけではないのですなぁ。「安全神話」に関しては映像作家の森達也氏が面白い論考を書いています。
↓↓↓
ごめんなさい。原子力安全神話は僕たちが形成した(森達也 リアル共同幻想論)
http://diamond.jp/articles/-/15087

神話には預言が付きものですが、もし神様から何か託宣があるとすれば「見ろ。言わんこっちゃない」「でも、知らなかったとは言わせないよ」というものになると思います(^_^;)

神話言わんし(シンワイワンシ)

戦前は天皇、戦後はカネ。
お粗末さまでした(^o^)
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テーマ : 震災救援・復興 - ジャンル : 政治・経済

コメント

お久しぶりですが相変わらず地位協定破棄です

日々坦々さま「脱「脱原発」の加速~調達価格等算定委員会人事のワナ (東京新聞)」
http://etc8.blog83.fc2.com/blog-entry-1293.html
>「ネズミが衛生を語り、居並ぶハエが拍手を送る」

ネズミ=核武装米占領軍と地位協定
衛生=放射能安全
居並ぶハエ=霞ヶ関官僚ハエ・天下りOB政商ハエと官僚出身政治屋ハエと記者クラブマスゴミハエ

まさに地位協定下の米軍植民地無法奴隷国家ニッポンのことではないですか。

やはり国民投票は「脱原発」などという実施しようとすればネズミとハエが真っ黒にたかって腐らせて餌場にしてしまう政治的不確定命題ではなく、至極単純明快に「地位協定破棄」いっぽんで行うべきということです。まず最初に地位協定破棄ありき。

これならネズミもハエもまったく寄せ付けないまま戦後ずっと無効化されてきた日本国憲法を発効でき、しかる後にはネズミの国外駆除もハエのたかる地位協定治外法権汚職腐敗汚辱層の粛清除染も容易に迅速に完遂できます。

通りがけ さんへ

> 日々坦々さま「脱「脱原発」の加速~調達価格等算定委員会人事のワナ (東京新聞)」
> http://etc8.blog83.fc2.com/blog-entry-1293.html
> >「ネズミが衛生を語り、居並ぶハエが拍手を送る」

お久しぶりですが、あまりそういう気はしませんねぇ。
残り少ない今年と、それから来年もよろしく(^^ゞ

過失相殺と交付金

>すでに「巨額の交付金」を貰ってしまった自治体・住民は、原発事故に対して一方的な被害者とは言えなくなってしまうのです。

交付金をもらっていなかった自治体なら「一方的な被害者」といえるわけで、その理屈でいけば、汚染地域の飯館村、浪江町、南相馬市、伊達市、福島市、郡山市などは、東電に堂々と訴訟を起こせるはずですね。現実どうなのか知りませんが。

トミノ さまへ

> 交付金をもらっていなかった自治体なら「一方的な被害者」といえるわけで、その理屈でいけば、汚染地域の飯館村、浪江町、南相馬市、伊達市、福島市、郡山市などは、東電に堂々と訴訟を起こせるはずですね。現実どうなのか知りませんが。

ありゃ、と思って調べたら南相馬市が辞退したのは東北電力からの交付金で、東京電力からの交付金は最初からもらっていないのでした。混同していました。
ただし、雇用の創出効果…なんてものも含まれるようです。しかしそこまでハードルを高くしたら国民感情が許さないわけで、現実どうなるのかは誰もはっきりしてはいないみたいです。

地位協定こそ霞ヶ関法匪スパイの頼みの綱の生命線だから跡形もなく破棄消滅させてやればよいのです

雪どけ水さま
>あまりそういう気はしませんねぇ
わたしゃ読んでましたからね、ここ。ときどき拍手したりしてw

で、もいっちょ。

>この国の霞ヶ関役人が官吏公僕の立場権限を越えて米軍の治外法権の虎の威を借りて三権分立を侵し立法司法マスゴミと癒着談合して政治を壟断してきたのは地位協定あるがゆえです。原発利権などその最大最凶のものです。この官僚ファッショ政治は小泉アメポチスパイ政権時代に完成しました。その後は自民党は言うに及ばず民主党も菅前原岡田仙谷枝野野田等、みな小泉チルドレンです。米軍に奉仕するためには恥知らずな棄民テロ政治も嬉々として断行強制執行する、下品で愚劣な霞ヶ関アメポチスパイ官僚主導政治の最低のチンピラな手先どもです。

こんな腐ったアメリカさまべったり幇間宦官政治を日本国から一掃するには、人類史の恥辱「地位協定」の断固拒否、即時破棄が絶対必要であり、かつ十分条件であります。国会決議でも国民投票でも早い方で地位協定破棄を可決すればよいのです。結局のところ311に始まるこの亡国の一大危機にあたって日本に住んで独立不羈の誇りを取るか、奴隷の安楽(と言っても放射能テロを浴びながらですが)を取るかという問題だと思います。

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